「もったいない」と思いながら、ずっと引き出しの中に眠らせていたiPhoneがあった。
でも売ってみたら、思いがけないものが手に入った。お金だけじゃなくて。
これは、iPhoneを売った7人のその後の話です。スペックの話も、相場の話も、ほとんど出てきません。ただ、「売ったら何が変わったか」だけを書きました。
CASE 01 32歳・会社員・東京 「キャンプ道具、全部揃えました」

iPhone 16 Proを売ったのは、去年の11月だった。
理由はシンプルで、「iPhone 17 Proに買い替えたかったから」じゃない。ずっとやりたかったキャンプを、いい加減始めようと思ったからだ。
買取額は132,000円。思ったより全然高かった。その瞬間、頭の中でそろばんが弾けた。テント、シュラフ、バーナー、クッカー。ざっくり計算したらちょうど収まる。
翌週末、奥多摩のキャンプ場で初めて火を起こした。うまく着かなくて30分くらいかかったけど、その火でお湯を沸かして飲んだコーヒーが、なぜかすごく美味しかった。
iPhoneを売った話は、もうほとんど記憶にない。でもあの火の起こし方は、たぶんずっと覚えている。
CASE 02 26歳・フリーランス・大阪 「積立NISAを、ようやく始めました」

正直に言うと、iPhoneを売るまで「積立NISA」という言葉をちゃんと理解していなかった。
なんとなく「やった方がいい」とは知っていたけど、まとまったお金を用意するのが面倒で、ずっと後回しにしていた。iPhone 15 Proが引き出しに眠っていたのも同じ理由だ。「いつか売ろう」と思いながら、ずるずると。
買取額は89,000円。その場でNISA口座を開いた。月々10,000円の積立設定をして、残りは緊急用に取っておいた。
大袈裟かもしれないけど、あの日から「将来のことを考える自分」に少しなれた気がする。iPhoneが背中を押してくれるとは思っていなかった。
CASE 03 44歳・主婦・福岡 「母と、温泉に行きました」

夫から「古いiPhoneが2台あるから売っといて」と頼まれた。iPhone 14と15、合わせて107,000円になった。
夫は「好きに使っていい」と言った。一瞬、新しい家電を買おうかと思った。でも気づいたら、母に電話していた。
母は70歳で、一人暮らしをしている。最後に一緒に旅行したのは、もう6年前だ。
別府で2泊した。露天風呂に入りながら、母が「こんな贅沢したの久しぶりやわ」と言った。その声がちょっと震えていた。
帰りの新幹線で、夫に「ありがとう」とLINEした。iPhoneを売ったお金で買えたものは、旅行じゃなかったと思う。
CASE 04 19歳・大学生・名古屋 「好きなアーティストのライブに、初めて行きました」

ずっと好きだったアーティストがいる。地元に来ることはほとんどなくて、東京のライブに行くのはお金がかかって無理だと思っていた。
iPhone 13を売ったのは春だった。バイト代と合わせればいける、と計算した。買取額は38,000円。正直もっと安いと思っていた。
新幹線で東京に行って、初めて武道館に入った。席について、ステージを見た瞬間に泣いた。曲が始まる前から泣いた。
帰りの新幹線でぼーっとしながら、「売ってよかった」と思った。iPhoneじゃなくて、あの時間を選んでよかった、という意味で。
CASE 05 38歳・エンジニア・神奈川 「ずっと読めなかった本を、200冊買いました」

iPhone 17 Pro Maxを売った。買取額は198,000円。
「なぜ売ったのか」と聞かれると説明が難しいけど、「最新機種を追いかけることに飽きた」のだと思う。毎年同じように感動して、毎年同じように慣れて。それが少し虚しくなった。
お金の使い道は決めていた。本だ。Amazonのほしいものリストに何年も積んであった本が、200冊以上あった。
今は読書が趣味になった。電車の中でもベッドの中でも読む。スマホを見る時間が減って、目も疲れなくなった。
皮肉なことに、iPhoneを手放してから、生活が豊かになった気がしている。
CASE 06 51歳・自営業・京都 「商売道具を、新調しました」

小さなパン屋をやっている。オーブンの調子が2年前から悪くて、ずっと騙し騙し使っていた。
iPhone 3台分(自分のと子どもたちの古い機種)を一気に売った。合計で165,000円になった。
新しいオーブンを入れた翌朝、焼き上がったクロワッサンを一口食べた瞬間、「あ、これだ」と思った。前のオーブンで何年もかけて失っていたものが、そこにあった。
お客さんに「最近パンが美味しくなった」と言われた。iPhoneが3台、クロワッサンに変わった。悪くない交換だと思っている。
CASE 07 29歳・看護師・札幌 「まだ、決めていません」

先月、iPhone 16を売った。買取額は71,000円。
何に使うか決めないまま売った。「決めたら売ろう」じゃなくて、「売ったら何か変わるかな」という気持ちだった。
今はまだ通帳に眠っている。旅行かな、と思う日もあれば、楽器を買おうかな、と思う日もある。
でも不思議なことに、「何か変わるかも」という感覚は、売った瞬間からもうあった。口座に数字が増えたことより、「選択肢ができた」という感覚の方が大きかった。
まだ使い道は決まっていない。でもそれでもいいと思っている。引き出しで眠っているより、ずっといい。
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iPhoneを売るとき、多くの人は「損したくない」と考える。
でも今回話を聞いた7人が口を揃えて言っていたのは、そういうことじゃなかった。
キャンプの火、初めてのライブ、母の震えた声。そういうものの話をしていた。
引き出しの中のiPhoneは、今日も少しずつ価値を失っている。でもそれより大切なのは、「あのお金があれば何ができたか」を後から後悔しないことかもしれない。
あなたのiPhoneは、今、どこにありますか。
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